出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
変態性欲(へんたいせいよく、英語:Perversion)は、人間の性的行動や性欲のありようにおいて、正常と見なされない種類の嗜好を指す。大正時代から昭和初期にかけては、精神医学における用語でもあったが、今日では、性的倒錯(paraphilia)という言葉が術語として使われる。「変態性欲」は現代では俗語であり、それ故、個人個人で意味の捉え方が一定しない。
なお、日本においては大正時代には早くも俗語化しており、当時、「変態性欲」ブームが起きて文学者から民俗学者までさまざまな人が変態性欲について論じている。当時は自慰やインポテンツも変態とみなされることがあったが、時代の推移により意味内容は変わっていった。「変態性欲」の語が日本で広まったのは、1914年(大正2年)にクラフトエビングの『Psychopathia Sexualis』が、『変態性慾心理』の題名で翻訳刊行された影響が大きかった。
目次
[非表示]
1 概説
2 分類
o 2.1 性行為の逸脱
o 2.2 性対象、性的興味の逸脱
o 2.3 正常と異常
3 偏見に基づく誤用・濫用
4 関連項目
概説 [編集]
一般的に、通常生活において性的魅惑を生じない、あるいはそう個々人で考えられている行為や状況に対し、性的興奮を覚える心理を指す。ときとして異常なまでに性に執着する様態を意味する場合がある。異常性欲、変態とも言うが、微妙に意味が異なっており、変態性欲の意味内容自体に曖昧さがある。変態性欲を(主に対外的に)行動に移すとき、場合によって、変質者と呼ばれることがある(変態性欲者のすべてが変質者に含まれるわけではない)。
俗語化した結果と、古い時代の性的倒錯に対する考えかたをそのまま残していること、加えて個々人の偏見に基づく決めつけの為にこの概念が使用される結果、俗語である以上に、他者に対する侮蔑語、差別語として使用されている。21世紀の現代になってもなお、クラフトエビングの著書が、大正時代と同様の『変態性慾ノ心理』という題名で出版されており、本来は学術書である研究書が興味本位で読まれていることも、この趨向に拍車をかけている。
ローマ字表記の「HENTAI」の頭文字を取って、H(エッチ)という言葉が生まれたという説もある(実際広辞苑にもその記述がある)。 ただし、H(エッチ)は大正までホモの詐称的隠語として用いられている為、小説等では時代を上るほど 同性愛という意味合いが強くなる。
分類 [編集]
かつては異性間における性行為である性交を標準に捉えて、それから逸脱したと思われる行為を全て変態性欲と定義していた。 例えば、下記の「性行為の逸脱」のような性行為のありよう、性的衝動、同性愛などの性的指向、また多様な性的嗜好が変態であり、「異常」とされていたのである。
しかし、この中で、同性愛に関しては、現在は考え方が変わっている。
現在、国際医学会やWHO(世界保健機関)では、同性愛は「異常」「倒錯」「変態」とはみなしておらず、治療の対象から外されている。同性愛などの性的指向については発達障害などとは別のもので、矯正しようとするのは間違いとの見方が主流となっている。一人一人の中で、「同性指向」と「異性指向」がある一定の割合で存在しているというのが人間という「種」の基本的性質であり、そのパーセンテージは自分の意志で簡単に変えたり選んだりできない可変性の低いものになっている。 また、日本精神神経医学会は、「同性愛はいかなる意味でも治療の対象とはならない」という見解を宣言している。
こうした理解に見られるように、現在では、同性愛を「変態」と呼ぶことは医学的に正確ではない。
性行為の逸脱 [編集]
正常位以外の体位(後背位・騎乗位など)
性器以外の部分で行う性行為(フェラチオ・クンニリングス・パイズリ・アナルセックスなど)
性具(ダッチワイフ・バイブ・ローターなど)を用いた行為・通常は性行為に用いない道具(日用品、食品など)を用いた性行為
集団での性行為(グループセックス・スワッピング)
ナルシシズムと強迫観念を伴わない自慰
性対象、性的興味の逸脱 [編集]
性対象(性的魅力を持つもの・状態)の異常
o 自体愛(病的自慰・ナルシズム)
o 拝物愛・異物嗜愛(フェティシズム・フェチ)
o 家電製品愛(扇風機・携帯電話など)
o 服装倒錯(コスプレ・異性装(女装・男装)趣味)
o 小児性愛(ペドフィリア)・少女愛(ロリコン)・少年愛(ショタコン)・エフェボフィリア
o 老人性愛(ジェロントフィリア)
o 偶像嗜愛(架空の存在(漫画・アニメ・ゲームキャラなど)や人形などへの(恋愛以上の)感情と妄想)
o 近親性愛(感情ではマザコン・ファザコン・シスコン・ブラコン。行為では近親姦など)
o 動物性愛(獣姦など)
o 畸形愛好(フリークス嗜好)
o 死体愛好(屍姦など)
性目標(性的満足の行為)の異常
o 強制わいせつ(痴漢・痴女など。強姦などの性犯罪行為)
o 疼痛性愛(SM(サディズム・マゾヒズム)・快楽殺人など)
o 人肉嗜好(カニバリズム・丸呑みフェチ(Vorarephilia))
o 排泄物淫乱症(糞尿愛好症)
o 虐待行為(性的虐待・動物虐待など)
o 露出症・窃視症(窃視(のぞき)・盗撮)
o 強姦強迫観念(Biastophilia)
o ズーサディズム(zoosadism・動物を痛めて快感を得る)
o テレフォン・スカトロジア(Telephone scatologia・猥褻電話をかけて快感を得る)
o ウェット&メッシー(濡れ、汚れフェチ)
(参考文献:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
正常と異常 [編集]
変態性欲においては、正常であるか異常であるかを問題にするが、性的嗜好においては、精神医学的に精神障害と見なされる極端な逸脱を除いて、今日では正常と異常の区別には意味がないと考えられている。むしろそれは、偏見などに基づく社会差別の装置の一部を構成している。
例えば江戸時代以前の日本において、同性愛、フェラチオ、自慰などは、現代と同様に異常と見なされていなかった。またキリスト教が普及する以前の古代ローマでも異常とはされていなかった。こうした正常・異常の線引きはキリスト教を始めとする宗教の多くが、生殖を伴わない性的欲望を悪しきものとして遠ざける傾向にあったこと、長い年月のうちにそうした価値観によって育てられた層が常識として正常と異常を区別し始めたことなどが背景にあるとされる。日本においても、明治維新後の西欧文明流入以降最近までこのような価値観が広まっていた。本来は正常と異常ではなく、本人や相手の身体的・心理的な健康や、また周囲との人間関係における障害の有無が問題となる。
このような性的な生活における健康と規準から見て、通常の性行為であっても、極端に回数が多い場合や、あるいは見境なく不特定の相手と行っている場合などは、変態の範疇に入れられることもある。自分達の行為を写真やビデオに撮影して楽しむ行為なども、パートナーが嫌がるのに強要したり、第三者に見せたりすれば変態の領域に入りうる。
偏見に基づく誤用・濫用 [編集]
「変態性欲」あるいは、それが更に俗語化した「変態」という言葉は、社会的に少数者の性的嗜好に対し、また差別の意図から敢えて、他人を貶める目的で使用されることがある。性質や行動が普通の人とは異なる「変人」との混同や、本来の性の嗜好についての逸脱という原義から懸け離れている例も多い。例としては「服装や外見がみすぼらしい、または貧乏な男は女性に相手にされないので性欲を溜めており変態だ」など。他にも、年長者の女性に思慕の念を抱く男性を「マザコン」の性癖をもつとしたり、少女のアイドルやスポーツ選手のファンを「ロリータコンプレックス」の性癖をもつものとして、一方的に変態性欲の持ち主として扱う傾向もある。
これらは、典型的なタブロイド思考であり、偏見と差別に基づく臆断であるが、変質者、犯罪者あるいはその予備軍であるとしてコミュニティからの排除さえ行われることがある。
【日記の最新記事】

